谷山浩子 猫森集会 2023 season20 @スペース・ゼロ 2023.9.17
今年(2023年)4月の大阪、デビュー50周年コンサートが18年ぶりの参加で、それに続く今年2回目の参加である。会場はファンにとっての聖地と言ってもいい「スペース・ゼロ」(東京・新宿駅南口)。ここを訪れるのは19年ぶり7回目だ。
ゲストは六角精児さん。六角さんの音楽活動を知らなかったので、「歌うの?」というのが第一感想だった。職場の人に話した時も「歌うの?」と聞かれて、「さぁ?」と私は答えたのだった。
そして、私は自分自身の無知っぷりを謝らねばならないことになる。
最初の5曲は谷山さんと石井AQさん(2曲目から)による、いつものコンサート。2曲目で大好きな『三日月の女神』を聴けたのは嬉しかったが、ここでハプニング。最初の間奏を谷山さんが間違えてしまい、始めからやり直すことに!
でも、ここは猫の森…猫森集会である。ちょっと加齢風味のコアな猫どもが集った会場の空気はあたたかい。
その昔、青山円形劇場の101人コンサート(オールリクエスト)で『月見て跳ねる』をリクエストされたところ、演奏がストップしてしまい、その場でリハを行ってやり直したというエピソードを思い出す(1996年、自分はその翌日の参戦だった)。奇しくも同じ「月」がモチーフの楽曲で、やっぱり月は「♪邪な月」なのだろうか。
谷山さんが、中秋の名月にちなんで「月の曲を歌います」と紹介したときには、その『月見て跳ねる』を期待したけれども残念ながら歌われず……でも、次の『同じ月を見ている』も良曲なのである。あ、『月と恋人』も聴きたかった!
そして、この後に登場するゲスト六角精児さんの鉄道好きに合わせて、今回は「駅」にちなんだ曲を選んだとの予告トークが。
こ、これは、もしかして、「♪紀勢本線 各駅停車 南部の次の~」が聴けるのか?あの人類滅亡しちゃう『テングサの歌』が!と期待させられるなか、まずは『空の駅』と『骨の駅』。
『骨の駅』は個人的に思い入れのある曲だ。というのも、昔、谷山さんのFM番組『ミスティナイト』のショートストーリー朗読コーナーで、自作の『骨の博物館』という短編が採用され、その時に流された曲だからである。この短編、幸運にも当時のファンクラブ会報にも掲載された。
(↓谷山浩子ファンクラブ ねこ森通信60より。クリック・タップで拡大)
5曲終わったところで、六角さんが登場。ステージのセンターに置かれているのは、フォークギターとマイクスタンド。あ、歌うんだ……と思った次の瞬間には、私は全力で謝罪せねばならなくなるのである。
六角さんの『ディーゼル』『人は何で酒を飲むのでしょう』を2曲続けて。後者はちょっと卑猥な歌詞もあって笑、普段とは全く趣が異なるのに、谷山さんのピアノ・コーラスと六角さんがギターを弾いて歌うフォークが心地良い。
思えば、谷山さんの初期の楽曲にはフォークっぽいのもあるし、この後のトークで、みなみらんぼう・鈴木慶一・高田渡・森田童子などの名が出てくるのだけど、自分よりも前の世代ではあるものの聴いたことはある。
六角さんの『わたしはオルガン』は内臓(organ)の歌で、続けて谷山さんの『きみがいるから』が血管や内臓の歌。谷山さん、ほんと何でも歌っているな笑
そして、ライブのサブタイトルにも入っている『まもるくん』。会場の最寄り駅である「新宿」も出てくる歌。新宿だから『てんぷら☆さんらいず』も聴けるかなと思っていたのだけど、本人いわく「歌いにくい(笑)」らしい。ゲストに歌ってもらえばよいのかも!
しかし、この歌、家族が気絶するとこで笑ってしまう……怖い歌なのに。かの『たんぽぽ食べて』といい、どこからこんな歌詞を発想できるのか。
もう、この頃にはすっかり六角さんの歌に酔いしれてしまっているのだった。
初期の楽曲でフォークっぽい良曲『河のほとりに』。そして、駅の歌として『夕焼けリンゴ』、このあたりの選曲がコアなファンとしては嬉しい。
そして、ついに来ました『テングサの歌』。こんな軽やかなメロディと声で人類滅亡を歌い上げる、いつもの浩子さんなのである。
『星より遠い』の後は、六角さんがメインボーカルの『まっくら森のうた』。コアな選曲が多い中で、定番中の定番曲。男性の歌う「まっくら森」を聴くのははじめてだったが、ライブ中に谷山さんが話していたように、六角さんの歌は言葉が届く。
『フィンランド』がラスト。あれ、「ぼちぼちお別れの時間~」っていつものセリフは言ったかな?
アンコールは会場の誰もが思い浮かべていたであろう『終電座』。いや~、これ、本当に六角さんのボーカルが良かった。もうさ、「♪銀河鉄道だ」のくだりで泣きそうになった。谷山さんが歌う絶望や滅亡が、ほんとに好きすぎる。『ピエレット』や『ひとりでお帰り』がきっかけでファンになった自分が言うのもあれなんだが笑
遊佐未森さんゲストのAプロのチケットが取れなくて落胆してたけど、結果、大満足のライブだった。今まで見たライブの中でベスト3に入ると思う(毎回、そう思うのだが!)。六角精児さん、ありがとう。
途中のトークで、舞台関連の話題から『アタゴオルは猫の森(ますむらひろし作)』の話になり、その後に六角さんが次の日に仕事で米沢に行くと言ってて、ますむらひろしさんは米沢の出身で『ヨネザアド物語』という作品がありますよ~って心の中でツッコんでいた笑
後記
さて、ここからは、さらに個人的な思い入れの話を。
はじめて浩子さんのコンサートに行ったのは1994年。2005年の音楽劇「アタゴオルは猫の森」を最後にブランクが空いていましたが、今年2023年4月の大阪で「デビュー50周年コンサート フィナーレ」、そして今回の「猫森集会」へ。
僕にとって、谷山浩子というアーティストは特別な存在です。30年前(歪んだ王国や天空歌集のころ)にその世界に触れて、本当に価値観が自分の中で再構成されました。いつも見てる風景が違って見えるようになりました。
個人的な三大原体験を上げるとしたら「江戸川乱歩、谷山浩子、エヴァンゲリオン」(編年順)。この三つに出会わなかったら……もっと楽に人生を生きていけたのかもしれません(笑)。見えてないものを見えるようにしてくれた、そんな体験です。
デビュー50年を経てもなお、こうやってライブで歌を聴けるのはファンにとって幸せなことです。コンサートが終わり会場の外に出て、夜の暗がりの中を駅へと歩いていくときの感覚といったら……
またライブに行きたいし、そのために日々を頑張って行きたいし、生きたいし、逝きたい……いや違うな笑。生きたいと逝きたいが同音異義(反対)って、何かの嫌がらせですか?
闇の反対に光があって、夜の反対に昼があって、月の反対に太陽があって、死の反対に生があって、そんな感覚を僕は谷山浩子さんから得たんだなって、いま思っているのです。本当にありがとう。そして、これからも。(了)
セットリスト
「猫森集会2023 season20」Bプログラム まもるくん再び ~鉄道と尿酸値とわたし~ ゲスト:六角精児
以下、公式サイトより
- ナナカマド
- 三日月の女神
- 同じ月を見ている
- 空の駅
- 骨の駅
- ディーゼル※
- 人は何で酒を飲むのでしょう※
- 私はオルガン※
- きみがいるから
- まもるくん
- 河のほとりに
- 夕焼けリンゴ
- テングサの歌
- 星より遠い
- まっくら森の歌
- フィンランド
- 終電座 <アンコール>
※は六角精児さんからの曲(筆者注)