司法書士試験:何肢検討する? – 午後択一の攻略法 3

司法書士試験合格体験記

私が実践した午後択一の解法を紹介します。学習法ではなく攻略法です。

目標時間と正解数

はじめに、目指すべき解答時間と正解数から。

解答時間は60分を目指します。別記事に書いたとおり、マークシートは解いた後にまとめ塗りで約3分ほどかかります。合計65分以内が目標。

正解数は30問(90点)を目標。午前・午後ともに30問(90点)を取ると、記述は基準点を超えさえすれば合格できる「択一逃げ切り」に持ち込める可能性が高まります。2020年度の例では、択一60問180点+記述基準点32.0点=212.0点となり、合格点205.5点を上回ることになります。

私の本試験での午後択一は60分(マーク時間含む)・30問正解(90点)でしたので、理想的な結果でした。

何肢検討したのか

60分で35問を解くためには、普通に全肢を検討するような解き方ではまず無理です。

本試験の問題用紙の書き込みから、実際にいくつの肢を検討したのか数えてみました。

35問175肢中で132肢。1問あたりに平均すると3.8肢

これは正誤判断(肢に○×の印をつける)をしたカウントです。

後述するように、組み合わせ問題において解答肢に未検討の肢が含まれているときなど、その肢を原則として確認していました(○×印をつけないこともある)。また、検討して正誤判断しなかった場合もあるので、実際はもう少し検討しています。

4肢ほど検討するというのはちょっと多いかもしれませんが、30問を正解する質を維持するためには仕方なかったと思っています。

その肢、検討する?

4肢ほど検討したといっても、適当に4肢を抜き出して解答を導くというものではありません。

多くの受験生が行っている方法で、選択肢の組合せから逆算して肢を検討することになります。ここで、ちょっと厄介な問題が生じます。

まずは選択肢の中から、以下のものを優先的に選びます。

  • 短い文章のもの
  • 選択肢は下から上に見ていく(対話問題などを除く)
  • 典型論点(過去問頻出)のキーワードが含まれているもの

ひと目見て短い文章のものを選び、正しく正誤判定できれば、かなりの時間短縮になります。ただ、短文問題はうっかりミスも生じやすく致命的になることもあるので、気をつけないといけません。

選択肢を逆順にたどる方法は、複数の講師の先生方が推奨しています。単純正誤問題だけでなく組み合わせ問題でも、過去の正答肢の偏りから、逆順のほうが効率的なようです。

また、長文で複雑な選択肢に見えても、過去問に頻出で典型的な論点ということもあります。不動産登記法や商業登記法で、どの選択肢もある程度長い場合、さらっと見てキーワードを目にしたら取りかかるというのも手です。

「抹消で付記登記」とあれば、どんなに問題文が長くても×肢

一つの肢の正誤判断をしたら、選択肢の組合わせを見ます。

問. 正しいものの組合せは、どれか

アを正しいと判断した

「1 アイ  2 アウ  3 イエ  4 ウオ  5 エオ」

イとウに絞られる

まずイを検討したとする

イを誤りと判断した

「2 アウ」と解答する(消去法)

念のために「ウ」を検討する?

これが厄介な問題です。

アとイの正誤判断から消去法で「2 アウ」を選ぶとき、ウの肢は未検討だからです。

時短のためにはさっさと解答を決めるべきでしょうが、未検討で解答するのは実に気持ち悪い。そこまで自分を信用できるのか……

次にもう一つのパターン。

問. 正しいものの組合せは、どれか

アを正しいと判断した

「1 アイ  2 アウ  3 イエ  4 ウオ  5 エオ」

イとウに絞られる

イを正しいと判断した

「1 アイ」と解答する

念のために「ウ」を検討する?

この場合、解答肢に含まれる2肢は検討済みですが、ウの肢、気になりますよねえ……

上記2つのパターンで、私は原則として検討することにしていました。

これは人によって判断が分かれるところで、このような検討をすることこそリスクが高くなるという考え方も当然に成り立つと思います。

そこで、他の肢を検討する場合、

  • 明らかに長文で複雑そうなら検討しない
  • 無理に正誤判断しない

というように気をつけていました。

また、先にも書いたように平均で4肢ほど検討しているのは、上記2パターン以外でも、ぱっと見で解けそうな選択肢は念のために検討していたからです。

肢の検討数を増やせば、延々と悩み続ける負のループに落ちていくリスクも増えます。

結局のところ「60分で解く」というのが大事なので、60分で解けないなら余分な検討をするべきではないし、検討をしても60分で解けるならOKということになります。

択一で高得点を取り、午後記述を基準点だけで合格する状態にしたい――という戦略でしたので、肢の検討数の削減はある程度にとどめる方針に。

答練や模試で時間管理を最優先!に訓練していくことが、私にとっては大きな効果がありました。

分からない問題を後回しにしない

記憶が曖昧だったり、難度の高い問題があった場合に、解答を保留して後回しにするのかどうか。

これも人によってやり方が違うところだと思います。

自分の場合は見切りをつけて解答肢を選び(保留にしない)、後からの再検討もしませんでした。

問題を飛ばすと時間配分のペースが分かりにくくなるのと、時間がない中で結局焦ってしまうので、答練・模試も含めて「とりあえず飛ばす」という方法はとっていません。

なお、午前択一では後回しにするのもよいと思います。通常の難易度であれば、午前は全肢検討でも時間が余るので、憲法の学説問題や民法の複雑な事例(計算問題など)を保留するのもアリでしょう。

問題文を読む意識

答練や模試で午後択一を解いていると、最初のうちは時間を意識するあまりに、どうしても問題文を雑に読んでしまうことがありました。

問題文の読み間違いによる正誤判断のミスは致命的で、むしろその選択肢を読まなかったほうがよかったことになります。また、私自身の加齢による視力(老眼)もバカにはできない事情でした。

そこで、問題文を読み飛ばさないように意識していました。流し読みをすることはあっても文字を読み飛ばすことはしない、という感じです(表現が難しいですが)。

また、学習が進むと問題文の論点を想起できるようになるのですが、それがかえって思い込みによる読み間違いのもとにもなります。一字一句を読み飛ばさないというのは、学習が進めば進むほど意識しないといけないように感じました。

このことは記述問題でも同様でした。

解き方の工夫

一つだけ。

単純正誤問題には、解答した選択肢に「→(矢印)」を記入するようにしました。とくに「誤っているもの」を選ぶ場合にマークミスを防ぐためと、マークの見直しをしやすくするためのものです。

組合せ問題では解答肢(問題下部)に○印をつけますが、単純正誤問題の場合は選択肢=解答肢のために○印と×印で混乱する可能性があるからです。

(※問題文にぼかしを入れてます)

↑本試験では「誤っているもの」を選ぶ単純正誤問題がなかったため、模試の画像をアップしています。

その他、解法テクニックについては、LEC講師の森山和正先生の本を参考にしました。

最後に念押し

大事なことなので繰り返しますが、午後択一を60~70分で解かないといけないことは、多くの講師も語る共通認識です。

とにかくマイナー科目(午後択一の前半11問)を15分以内(1問1分ちょっと)で解く感覚を身につけてしまいましょう。その感覚を維持すれば、不登法・商登法は問題文量が増えるので、1問2分ぐらいになるはずです。

繰り返し訓練しているうちに、時計を見なくても体感で早い・遅いがわかるようになってきます。

正直、合格レベルの受験者でも全肢を検討すると時間が足りない試験というのはどうかとも思います。なぜなら、受験テクニックが必要になるからです。出題側は「受験テクニック」という言葉を嫌うはずなのですが……