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「赤い蝋燭と人魚」感想

読書

赤い蝋燭と人魚

赤い蝋燭と人魚

小川未明は、シンガーソングライターの谷山浩子さんが良く言及されているので、はるか昔に「小川未明童話集」(新潮文庫)を読んでいたとは思います。ただ、すっかり内容を忘れていました。

酒井駒子さんの絵ということもあって手に取ったのですが、読んでいるうちに体の中から震えてきました。

ああ、なんて悲しい物語。ただ悲しいだけでは、ないんですね。お涙頂戴物語では決してない。だから、安易に「泣ける」という言葉は使いたくない。悲しみは世界を破滅させる力を持っているのですね。

酒井駒子さんの全体的に暗く不安げな絵のタッチが、見事に小川未明の文章と合っています。

間違いなく素晴らしい傑作絵本です。

「狼と香辛料〈14〉」感想

読書

狼と香辛料〈15〉 太陽の金貨<上> (電撃文庫)

狼と香辛料〈15〉 太陽の金貨<上> (電撃文庫)

いよいよ終わりに向けて、決断の時を迎えました。

エルサが良かったですね。エルサの決意や告白がロレンスの決断を促すシーンは、いい感じの描写でした。

「アヤツジ・ユキト 1987-1995」感想

読書 綾辻行人

アヤツジ・ユキト 1987‐1995 (講談社文庫)

アヤツジ・ユキト 1987‐1995 (講談社文庫)

20年ぐらい振りの再読。当時はハードカバーで読みました。

小説以外の文章を、他書の解説や推薦文まで含めて収録している雑文集。その徹底ぶりがファンとしては嬉しい。

いま綾辻作品を刊行順に読んでいるので、その背景や心情が見えて面白いですね。脚注形式でのコメントが足されているのも良い趣向です。

これからの読書の参考にしようと、言及されている本などをメモしていたら「いつか読んでみたい本リスト」が更に増えてしまいました。プラス100冊以上!

作品と作家は切り離すべきだとは思っていますが、綾辻さんは穏やかな?感じがするのでエッセイを読んでいても好感が持てるんですよね。毎回「あとがき」を書いてくれるのも嬉しいです。「あとがき」を読むのが好きなので。

次は「セッション ─綾辻行人対談集─」を読みます。

「フリークス」感想

読書 綾辻行人

フリークス (角川文庫)

フリークス (角川文庫)

中編が3つ。うち「四〇九号室の患者」は独立した単行本で20年ほど前に読んでいます。他2作は初読。

収録作のどれもが、作中作(患者の手によるものとされる)の体裁を取っています。そして、その語り手の不安定さも相まって、読んでいるうちに視点が混濁してきます。ホラーとミステリーが上手く絡んでいて、3作とも好きなタイプの話ですね。

特に表題作の「フリークス」がお気に入りです。

「フリークス」は、著者にとっても何らかの想いがある作品のようでして……。

光文社文庫版(2000年)のあとがきにこんな一節があります。

 振り返ってみるにつけ、他にもむろんいろいろな要因はあったものの、この「フリークス」という中編を書いて以来、どうも僕は「本格ミステリを書く」という行為にそれまで以上の辛さを感じるようになったのではないかと思います。まことに困ったことであります。
 今世紀のうちには何とかこの、自家中毒のようなぬかるみから脱出したいものですが、はてさて、仮にそれが叶ったとして、その先にはいったい何が待ち受けていることやら。思い悩んで行き着くところは、結局のところやはり、暗くて深いイドの底……なのかしらん。ま、いいけど。

も、もしかして行き着いたのは暗黒館? ちょうど「暗黒館の殺人」の連載が始まった時期に書かれたあとがきですね。

「暗黒館」はこれから読むのですが、文庫版四分冊(しかも分厚い)が「でん」と待ち構えており、ネタバレに触れないように気をつけてネットを見たりしているものの、漏れ伝わってくるその「異形さ」に、今からワクワクしています。

綾辻作品を刊行順に読んでいるので、実際に読み始めるのは少し先になりますが……。

次は「アヤツジ・ユキト 1987-1995」(雑文集)を読みます。

「BとIとRとD」感想

読書

BとIとRとD

BとIとRとD

8編のショートストーリーが収められています。「お友達」「幼稚園」「カミナリ」が好きですね。

静寂感・幻想味があって、少し怖さも感じられる絵が大好きです。

酒井駒子さんの絵本を手に取るのは2冊目。前に読んだ「ビロードのうさぎ」は原作付きでしたが、本書は文も酒井さんによる作。そして、その文章も素晴らしい。

子供視線で描かれている世界は、自分にもあったはずの、はるか昔に忘れてきた感覚を呼び覚まします。先に挙げた3作のうち「お友達」と「幼稚園」は、まさにそんなお話。

そして、「カミナリ」には参りました。この感性を文章と絵で表現できるなんて素晴らしい。

自分の読書歴の中で、絵本を手にしたことはほとんどありませんでした。でも、こういった素晴らしい作に出会ってしまうと、もっとたくさんの絵本を読みたくなってきます。

「眼球綺譚」感想

読書 綾辻行人

眼球綺譚 (角川文庫)

眼球綺譚 (角川文庫)

2000年に読んで以来の再読。

これはいい塩梅のホラー短編集でした。「いい塩梅」とは、先に読んだ「殺人鬼」と比べてのことです。あのスプラッターぶりを続けて読むのは、さすがにつらいので(笑)。

前半3編の「再生」「呼子池の怪魚」「特別料理」が良かったですね。

「呼子池の怪魚」は、幻想的で切なさが感じられるのが良いのです。ちょっと美しさを感じるでしょ。

「再生」は上手くオチが決まっています。

「特別料理」はオチが分かるけど、やっぱり嫌だ!怖い!となるところが良いのです。

表題作の「眼球綺譚」はミステリー的なタッチもあって、ぐいぐいと読ませる中編です。巻末の風間賢二さんによる解説が濃厚で、今後の読書の参考にもなりました。「殺人鬼」シリーズといい、本書といい、ホラー作の解説は旧版も含めてどれもこれも熱が入っていますね。

そう言えば、自分も昔、谷山浩子さんのFM番組「ミスティナイト」のショートストーリーコーナーに投稿したホラーがあります。

「カクヨム」に投稿してあるので、一読して頂けたら嬉しいです(2500字程度の掌編です)。
kakuyomu.jp
↑を書いて番組で読まれたのは1995年7月。本書「眼球綺譚」を読んだのは2000年なので影響は受けていないのですが。

さて、綾辻作品を刊行順に読んでいるので、次は「フリークス」を読みます。

「ムーミン谷の夏まつり(ムーミン童話全集 4)」感想

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ムーミン谷の夏まつり (ムーミン童話全集 4)

ムーミン谷の夏まつり (ムーミン童話全集 4)

ニョロニョロの種をまき、電気ショックで公園番を攻撃。そして、「~するべからず」看板を抜いていくスナフキン。子供の扱いに慣れておらず、困りながら子供らを抱えて歩くスナフキンの絵が最高でした。

慣習にとらわれていたフィリフヨンカが、好きなことをして悦びを得る場面も印象的。ところどころ風刺が効いていますね。

ムーミンが冤罪で牢屋に閉じ込められたり、そもそもムーミン谷は洪水に襲われているしで、起きている事は大変なのに、淡々とした筆致や登場人物の行動で、面白く、時には深く考えさせられる作品です。

前作で登場したミィの出番も増えて嬉しい。あと、ヤンソンの描くミムラ姉さんのイラストが素晴らしく可愛い(例:176p.)。原作を読むまであまり気にしていかったのだけど、ヤンソンの絵に心を奪われつつありますね。