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「霧越邸殺人事件(上・下)<完全改訂版>」感想

霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)

霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)

霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)

霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)

20年ぶりぐらいの再読。当時はハードカバーで読みました。

ストーリーはほとんど覚えていなかったものの、犯人はバッチリ記憶していました。まあ、一度読んだら犯人の名前は忘れにくいような作品ですよね。

今回、私が読み終わった時に思い浮かんだ言葉があります。

「インシテミル」

米澤穂信さんのミステリー小説(2007年刊)ですが、ストーリーではなく「タイトルの意味」で思い浮かんだのです。

米澤さんが「インシテミル」という聞き慣れないタイトルをつけたのは、「本格ミステリーに淫してみる」という意図だったと、何かで読んだ覚えがあります。

つまり、この「霧越邸殺人事件」に、著者・綾辻行人の本格ミステリーへの熱意のようなものが感じられたんですね。

そうしたら、巻末に収録されている著者インタビュー(2013年10月)の中で「まずはとにかく様式美に淫したような本格ミステリが書きたくて、本格としての整合性や完成度などを追及していったら、結果としてこのような、ジャンルの定型から逸脱したような形になってしまった、という順番だったんです」(下巻402p)と語られていて、合点がいったのでした。

これは綾辻行人さんの作品を読んでいていつも思うことで、作者と読者としての私の相性が本当にいいんです。なんか感覚・感性が合うんですよね。肌が合うとでも言うのでしょうか。

以下、蛇足。

上巻155p、書棚に並べられている本の書名として「時の回廊」「夢の逆流」が含まれています(※この2タイトルは作品に影響しません)。

これ、谷山浩子さんの楽曲タイトルですね! 20年前の初読時でも気付いていたことを思い出しました。

なお、初刊のハードカバー版(1990年・新潮社)のあとがきでは「谷山浩子・石井AQ・斎藤ネコ」さんといった谷山浩子ファンにはお馴染みの方たちへの謝辞があります。

また、作中に登場する「メシアン」という鳥の名付け親が谷山さんということも記されていますね。

次に、下巻301p 最後から3行目。

「だから、だったのです。」という一文がありました。なにか文章が欠落しているのでは……と思って、新潮文庫版(1995年刊)をあたってみたところ、どうやら無意味な一文のようです。

推測ですが、おそらく文章の改訂作業中に、文章の断片が残ってしまったのだと思います。パソコンで文章を書いていると、コピペ修正などで時々やってしまいますよね。

私が手にしたのは初版(2014年3月25日)なので、現在の版では修正されているかもしれません。

※ここから、作品の一部趣向に触れるので注意!










この角川文庫版の表紙の女性、気になりますよね? 最初、上下巻横に並べたら一人の顔になるかと思ったんですよ。で、実際に並べてみたら、顔の輪郭や髪の毛のラインは一致するのに、目と眉毛がちょっと違う。

あーこれ、作中の「深月(みづき)」なんですね! 同じ名前を持ち、よく似ていると言われていた、霧越邸主人の亡き妻と登場人物の二人。

素晴らしい表紙だと思います。読んだ後の余韻の中で気付いたので、更に余韻が深まりました。