読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「心の宝箱にしまう15のファンタジー」感想

心の宝箱にしまう15のファンタジー

心の宝箱にしまう15のファンタジー

巻頭作を読んだ時に「なんとなく子どもの頃に触れた外国の名作児童書っぽい雰囲気だなあ」と思ってちょっと調べてみたら、1924生まれの著名な作家だそうです。にわか読書好きで不勉強な私は、初めて聞いた名前でした。

なぜ子供の頃の世界名作児童文学っぽいと思ったかと言うと、ある種の「切なさ」や「哀しみ」が全体に漂っているからです。もう話の筋は覚えていませんが、「小公女」とかアニメの「世界名作劇場」とか、その類の雰囲気です。

本書は晩年の作者による15の自薦短編集ということで、どれも心に残る良作ぞろい。余韻に浸ってしまうため、一日一編のペースでゆっくりと読み進めました。

本作には不遇な少年少女が主人公のものが多くあります。どれも決してバッドエンドではありませんが、だからといって素直なハッピーエンドはほとんどありません。読み終えた後に、読者は主人公のこれからを想像し、幸せを願わずにはいられなくなります。

印象に残った作品を挙げると、「ゆり木馬」「からしつぼの中の月光」「キンバルス・グリーン」「魚の骨のハープ」「神様の手紙を盗んだ男」「真夜中のバラ」「お城の人々」……うーん、全部と言っていいかもしれません。

どれか一作だけを選べと言われれば「からしつぼの中の月光」と答えます。少女と祖母との交流、そして死。昔に読んだ(映画も見た)梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を思い浮かべました。

もう一つ、「神様の手紙を盗んだ男」。孤独な郵便配達人の主人公が、その孤独さゆえに他人の手紙を盗んでしまいます。そこから急速にストーリーが展開していく、ちょっとスリリングな作です。

どの作も、登場人物のキャラクターが一癖あって、ナンセンス・ユーモアが感じられるのも素晴らしいです。ただ泣かせるための作ではありません。

そこで気になったのが、本書の帯です。

寝る前の10分をください。幸せな夢と、明日また頑張れる力を約束します。
「今日は疲れたね。」「悲しかったね。」誰が言ってくれなくても、この本はあなたの痛みをきっとわかってくれています。

また、帯の背表紙側には「一生ものの、感動。」と書かれています。

これ、自分が最も苦手とする帯や惹句のパターンなんです。本書はネットで入手したのですが、もし店頭でこの帯を見たら絶対に手を出しません。こういった語句は、かえって軽薄に感じてしまうんですよね。ただ、出版されたのは2006年ですから、「癒し本」として推すのが当たり前だったのかもしれませんし、多くの読者を獲得するには正しかったのかもしれません。私が少しひねくれているだけで。

二分冊で文庫化もされていますし、ぜひご一読をオススメします!