読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「小学生までに読んでおきたい文学 1 おかしな話」感想

1おかしな話 (小学生までに読んでおきたい文学)

1おかしな話 (小学生までに読んでおきたい文学)

私には文学アレルギーがあります。だいたい子どもの頃の嫌いな教科は国語で、読書感想文なんて大嫌いでした。テストでは、文学作品の設問で「作者の意図は?」「この主人公の気持ちは?」というのが苦手。私立文系ですが、受験はテクニックで乗り切ったようなものです。

そんな自分の文学アレルギーを払拭する一歩として手に取ったのが本書です。

選んだポイントは↓

  • 小学5年生以上の漢字にルビをふっている

子供向けに漢字を開いていないので、大人の目から却って読みにくくなるということがありません。なお「小学生までに」とは「小学生のうちに」という意らしい。

  • 不適切な表現・語句も原文そのまま

なお、該当表現の注釈では意味を説明しており、不適切という指摘まではありません。

  • ネットの読者評を見るに「小学生向けではない」という感想が多い

つまり、大人である私の「文学入門」という目的には良い本だということです。

  • 活字の大きさや行間が適度で読みやすい

小さい字がつらくなってきた眼には丁度いいです。

  • 小学生向けに翻案・翻訳されたものではない

編者が筑摩書房の編集者だったこともあってか、筑摩書房(ちくま文庫)からの収録が多いです。

  • 1926年「猫の事務所」宮沢賢治
  • 1926年「詩人」モーム
  • 古典落語「時そば」桂三木助(演)
  • 1934年「ハリー」サローヤン
  • 1971年「悪魔」星新一
  • 1819年「ゾッとしたくて旅に出た若者の話」グリム
  • 1697年「猫の親方あるいは長靴をはいた猫」ペロー
  • 1980年「もてなし」カポーティ
  • 1937年「そんなこたないす」L・ヒューズ
  • 1916年「酒虫」芥川龍之介
  • 1943年「壁抜け男」エーメ
  • 1993年「たたみ往生」中島らも
  • 1985年「夢たまご」半村良
  • 1923年「手品師」豊島与志雄

(刊行年は筆者調べ・間違い可能性あり)

「猫の事務所」は読んだことあるかも。宮沢賢治は好きで良く読んでました。最後の「半分獅子に同感です」の「半分」が味わい深い。

モームの「詩人」は「ちゃん、ちゃん♪」とオチが付くようなショートショート。ちょっとした皮肉も感じられて面白かった。

古典落語の「時そば」は、前にEテレの「てれび絵本」で見たような記憶があるなあ。

「ハリー」と「悪魔」は、王道的な童話・寓話。

グリムの「ゾッとしたくて旅に出た若者の話」はオチに笑ってしまいました。いいんか、こんなオチで(笑) 昔「本当は恐ろしいグリム童話」って流行りましたよねえ。その時は手に取らなかったけど、ちょっと興味が出てきました。

ペローの「長靴をはいた猫」は澁澤龍彦訳! これ河出文庫版で読みましたよ。あの挿絵が素晴らしかった。眼帯をした猫の表紙画は今でも強く印象に残っています。最後の教訓が「※ただしイケメンに限る」みたいな感じで面白い。

カポーティは名前だけ知ってた。キャラの強い人々のエピソードが詰め込まれていて、不思議な味わい。

「そんなこたないす」は、タイトルの訳の通りに軽妙な一編。「病は気から」という話なんですが、黒人文学の先駆者の作ということで、風刺・皮肉も効いています。

「酒虫」は芥川龍之介。文学アレルギーな自分にとって、教科書以外で芥川作品を読んだのは初めてではなかろうか。注釈が多くて助かりました。そして前にも「猿の手」で紹介した動画シリーズに「酒虫」がありました。面白いので、原作を読んだ後にどうぞ。

最後に、「壁抜け男」「たたみ往生」「夢たまご」「手品師」と、ショートショートの楽しみとも言えるような作品が続きます。

本当に小学生がこれを読めるの?とは思うものの、それは私が文学初心者だからなのかもしれません。自分にとっては最適なシリーズのようなので、全巻読破しようと思っています。

あと、編者の松田哲夫さんの名前は、昔「王様のブランチ」を見ていた頃を思い出して懐かしかったですね。あの番組の影響力は大きかったような。